火の太鼓バナー
ホーム 太鼓ミュニケーション 火の太鼓 三国祭 横笛 サイト集内検索 サイト内検索


三国祭り体験談 (その弐)
(特別寄稿)

●


[前ページ][次ページ]

平成14年旭区祭りの時間 (2/4)

5月20日

 本祭り。

 暑くもなく寒くもなく快適な朝だ。軽く朝飯を済ます。ちなみに我が家では、祭りになると、刺身、ちらし寿司、赤飯、ぜんまいの煮たの、家族の誰かが露店で買ったベビーカステラの冷え切ったやつ、お客さんをもてなしたときの料理の残りモンが、常に食卓に並べられている。特にベビーカステラ、冷えると硬くなり食感が悪い。美味い店で買ったやつは冷えてからも美味いのだが、アツアツを食いたいのならばそれをオーブントースターで軽く焼くと香ばしくてイケる。これが楽しみでわざと残すことも無いことはないのだが、そんなことは置いておこう。

8時半、法被と豆絞りを装備し、山車小屋へ向かう。もう既に男たちにより”出陣”の準備が始まっている。屋台に舵棒が取り付けられ、車軸には潤滑のための鳥もちが塗られる。朝からビールも今日は無礼講。僕が着ている法被は青色の生地に旭区と書いてあるごく普通の法被なのだが、中には今日のために特注で作ってもらった法被を着ている青年団の方も数人おり、黒い法被、黒い股引、黒い足袋、頭にはねじりにねじった鉢巻と、その渋い風貌はかなり粋である。彼らが颯爽と舵を操る姿は、もうこれは実に格好いい。

全員では無いのだがほとんどの旭区民が巡行の出発に立ち会うべく小屋の周りに集まっている(中には六年に一度しか見ない旭の人や近くの区からの見物人も)。それを見ていると、「6年前中学校から帰って家に到着したのがちょうどこのくらいの時間だった。あれから6年、あのおばちゃんもあのおばちゃんもシワが増えたなあ。あの姉ちゃんには子供が出来て、あのおんちゃんは白髪が目立ってきた。(実際は福井弁で)」などと6年という時間の長さを感じるとともに、深い感慨を覚えるのだ。これは僕だけではないだろう。もしかしたら、この区の人間は、6年周期に時を刻みながら日々の生活を送っているのかもしれない。

ひと通り準備を終え、山車をバックに囃子方と曳き手の記念撮影。それが終わると区長の簡単な挨拶があり、そしていよいよ出発だ。いざ、三国神社へ。

 まずは旭区を一周する。区内を曳く時だけは、各家から参加する正式な(?)曳き手だけではなく、普通の区民も山車を曳く。区民が一体となって屋台を操るのだ。ちなみにこの光景は、行きと帰り、計2回見られる。ここでの山車曳きは、下町の旧市街地に比べ露店が無い分楽だ。狭い路地はいくつかあるもののまだまだウォーミングアップの段階である。今回僕は初めて後ろの綱を担当させてもらった。前進はそれほど力が要らないが、前の綱より人数が少ない分後退する時はかなりの力が必要。特に坂道などは面白い。本当に自分の力で山車を曳いているような気がする。昔は前の綱だっただけにここを担当するのは嬉しい。大人として成長したような錯覚を覚える。

 そこでアクシデント発生!普通、山車曳きをする時は武者人形を電線に引っ掛けないよう専用の竹の棒で電線を上に持ち上げるのだが、まだ持ち上げていないまま山車を曳いてしまったらしく、武者人形に電線がまるで首吊り自殺者の如く引っ掛かってしまった。そして弁慶の首は下向きになり、義経と共にいざ出陣というのになんだか出陣を躊躇しているような姿に。これでは他の町内から笑われる、旭区の恥だという日本人的理由により、いったん山車小屋に戻してから急遽人形師の岩堀さんに来てもらい治療してもらう。岩堀さんの話では図体から首まで通っている支柱が折れたらしい。大人10人がかりでも折れないほど丈夫と言っていた。ちょっと首が引っ掛かっただけのように見えたのにそんなに凄い力が発生していたとは・・。支柱を交換するのは時間的にも物理的にも無理みたいで、ワイヤーで首と人形の後ろを繋いで固定するという対症療法を施してくださった。見かけは初めとほとんど変わらない。

 時間が大分削られた。奉納の時間にはなんとしてでも間に合わなければならない。気を取り直して再出発。区内を後にして下町に向かう。旧森田銀行を過ぎたあたりから露店が道路脇に並び始め、通行人の量も増加する。ここからいよいよ熟練した舵取りの技術が必要になってくる。山車とのちょっとした接触が事故を招く恐れがあるからだ。かといって安全運転していたのでは面白くない。たとえ真っ直ぐの道でも右へ左へと舵を取り、「ピピッー!」と危険を警告する笛が鳴り響く中、「はいオモォー!!」と拡声器での怒声のような指示を仰ぎながら蛇行運転していくのが、山車曳きの面白さである。その指示を聞き、前と後ろの舵担当の人たちは「そーれッ!!」とタイミングよく舵棒を操る。それに伴い車輪が道路を削る「ギギギギィ!!」という音、その間絶え間無く続くお囃子が、人々の聴覚に迫力を訴えるのだ。気が付けば、天津甘栗やベビーカステラの甘い匂い、焼きそばやお好み焼きのソースの焦げる匂いが辺りを漂う。嗅覚が祭りの雰囲気に酔いしれる。


[前ページ][次ページ]



ホーム 太鼓ミュニケーション 火の太鼓 三国祭 横笛 サイト集内検索 サイト内検索