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三国祭り体験談 (その参)
(特別寄稿)

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平成14年旭区祭りの時間 (3/4)

 

昼、三国神社に到着する。ウチの区は六番山車で、七番山車の大石内蔵助(山車人形保存会)が旭に続いて到着したのをみると、時間は間に合ったのだろう。神社前に七基が勢ぞろいする時、観光客にとっては全ての山車を見られる絶好の機会であり、曳き手と囃子方にとっては休憩時間である。あらかじめ手配された弁当と大量に用意されたビールがそれぞれに配られる。道路脇にあった駐車場で町内の友人やおじさんたちと弁当を食っていたら小雨が降り始めてきた。屋根が無いので仕方なくそのまま食べていたら、隣の家のおじさんが「ウチの車庫使ってください」と雨宿り場を提供してくれた。非常にありがたい。感謝である。

 1時半、雨は止み、山車の奉納も終え出発だ。神社を離れる時になるといつも旭区は大量の酒まんじゅうを屋台の上から撒く。「6年間お待たせいたしました!」という意味なのか、「6年後またお会いいたしましょう」という意味なのか、理由は知らない。ただでさえ混雑している場所なのに、まんじゅうを撒き始めると更に賑わいが増してくる。見物客に向かって三国名物酒まんじゅうを景気良く振舞う光景は実にめでたい。これを読んでいる方で酒まんじゅう好きの方、2008年5月20日13時30分前後に三国神社前に来てください。おそらく1個ないし2個、図々しい方は3個もらえます。

 山車はその後、行きと同じ道を通り「メンズショップにし」の前で一旦休憩。なんでも前がつかえていて進めないらしい。山車曳きの“渋滞”である。休憩になるといつの間にかビールが各自に配られる。そして喫煙率がすごく高い。屋台の前の舵棒には長いストローがついた小さい樽桶が吊るされており、そこには日本酒が入っている。舵棒担当の人が威勢良く舵を取れるように設置されたものだろう。僕の弟(前の綱を担当している中3の坊主)を呼んで「カルピスが入っているから飲んでみ」と騙して飲ませたところ、「ウエーッ」と舌を出しながら「だますなや」と言っていた。こんなに簡単に騙されるとは。大の大人が舵を取りながらカルピス飲んでるわけねえだろ、弟よ。

 本当に前がつかえているらしく、進んでは休憩、進んでは休憩の繰り返し。それにしても今年は露店の数が少ない。やはり露店がひしめく中を歩かないと祭りという気がしない。不景気の弊害がここにも表れている。

旧森田銀行前も通過し、これから先は駅前に出るまで静かな路地が続く。静かではあるが、非常に曲がりくねっており道幅も狭い。前進する速度と微妙な角度の舵とりが上手く揃わなければたちまち民家に接触してしまうだろう。拡声器で舵を指揮する人のセンスが求められる。休憩になるとすぐにビールが配られるのでついつい飲んでしまう。酒はそれほど強くない僕は、平時なら缶ビール2本でベロベロのはずだけど、体を動かして発散しているためか、祭りという非日常に身を置いているためか、それほど酔いは回らない(といっても顔は真っ赤だが)。ちなみに弁慶の首だが、今のところ全く問題無し。

 夕方5時前。もうすぐで駅前に到着するという時に、なんと前の舵棒を友人と共にやらしてもらえることになった。やってみて思ったのは、いつ舵棒担当にまわされてもいいように全身の筋肉を強化しておこうということ。本当に力の要る仕事だ。力だけではない。後ろで曳いている人間には舵取りの指揮がコンマ数秒遅く伝わるため、彼らと同時に舵棒を動かすには、屋台下から後ろの人たちの足の動きを見て「今だ」と思った時に舵棒を動かすタイミングを掴む必要がある。そして棒を動かす時もただ左右に動かすだけでなく、前舵棒は下に押しながら、後舵棒は上に持ち上げながら、結局屋台を前に傾かせてから舵棒を動かさないと屋台はビクともしない。その分上手く動いた時、特に180度ないし360度の回転を、後の舵と力を合わせて鮮やかにやってのけた暁には、堪えられない快感が待っている。舵棒は山車曳きの華であり、山車曳きの真骨頂は舵棒にあると言っても過言じゃない。前の綱を曳いている酔っ払ったおじさんに「も〜あんちゃんらひゃくてんまんてんや」と言われ喜んだ。

 夕方5時、駅前で休憩。氷川神社で弁当を食う。曳き手や囃子方は気力体力を十分に回復させる。この後、いよいよ最終到着地である我が旭町への“凱旋”が待っているからだ。ビールを一気に飲み干し景気をつける男たち。

 夕方6時、武者人形を足元からライトが照らす。屋台についている提灯や民家前の提灯にも明かりが点される。このときから三国祭りはクライマックスへと突入する。疲労を通り越した先にある快感、酒による脳の麻痺、速いテンポが血を騒がせる戻り囃子、薄明かりの中に浮かぶ幻想的な武者人形山車、そして拍手を送ってくれる見物客、それらが渾然一体となって曳き手は『覚醒』し、見物客は『酔いしれる』のだ。

三国郵便局前まで行く途中、舵の指揮を伝える拡声器から「岩堀さんに拍手―!!」という声が響いた。ふと横を見ると人形師岩堀さんの家があり、御家族の方が見物している。曳き手からは感謝の意を込めて大きな拍手が。岩堀さんは思わず照れ笑い。


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